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2023年2月25日 (土)

おもちゃの修理記録(3)救急車

【不具合症状】
ボタンが使えず、音が出ない
【依頼症状の確認】
電池を新しいものに入れ替えているとのことだったが、ボタンを押しても反応がない。前回同じ症状を修理してもらったが、直って受け取って遊んでいたら、またすぐ反応しなくなってしまったとのこと。ねじのゆるみなどですぐ修理できる可能性も考えられたのでその場で中を確認したところ、スイッチを取り付けてある基板が割れていることが判明したため、入院とした。

【原因究明と修理方法】
1 3つのボタンは、がたつきなどはないが、特に真ん中のボタンは押しても押せず、戻っていない感覚がある。(この戻っていない感覚については、基板割れの補修とは別の対応が必要であることが後ほど判明した。)
Dscn2007
2 電池を取り外してから、裏側のねじ6本を外すと車体を開けることができる。ねじはかなり奥に止めてあるので、柄の長いねじ回しが必要である。また、ねじを外してもボディを外すのが固いので、注意を要する。開けた後に確認したところ、6本のねじ留め部分がそれぞれはまるようになっていて、ボディと車体をまっすぐに取り付け取り外しする必要があると思われた。
Dscn2042
3 ボディを外すと、屋根上のカバーを取り付けたねじ4本が天井に見えるので、これも外して、屋根上カバーを分離した。
Dscn2008
4 屋根上カバーの中にあるスイッチが取り付けられている基板が割れていた。
Dscn2011
5 割れた基板を補強して再利用する方法も考えたが、耐久性に疑問があるため、新たに基板を作成することにした。スイッチは外して再利用するため、また、基板は寸法や取り付け穴の位置を合わせる基本とするため、丁寧にはんだを外した。なお、前回の修理では下の2枚目の写真の基板上部に見える透明なプラスチック板で割れた基板を接続したものと思われた。
Dscn2018
Dscn2019
6 基板は幅17mm長さ72mmの片面基板であったので、手元の片面プリント基板を同じ大きさに切り出した。
Dscn2020
Dscn2021
7 元の基板と穴の位置を合わせるため、切り出した基板にセロテープで仮止めし、元の基板の穴からピンバイス(手持ちドリル)で切り出した基板に穴を開けた。
Dscn2022
Dscn2023
8 穴の開いた基板の銅箔面に、元の基板の回路をマジックで書き写した。
Dscn2026
9 書き写した回路の境界部分にPカッターで溝を切り、回路を作成した。
Dscn2027
10 出来上がった基板の銅箔面をボンスターで磨いてからフラックスを塗り、基板が完成した。
Dscn2028
11 元の基板のから取り外したスイッチをはんだ付けして取り付け、スイッチ基板が完成した。
Dscn2029
Dscn2030
12 元の通り配線をはんだ付けした。この状態で電池を入れ、3つのスイッチで動作することを確認した。
Dscn2031
13 出来上がった基板などを、元の位置にねじ止めして動作確認したが、真ん中のボタンの戻りが悪く、一度押すと戻らない状態となってしまった。再びスイッチ基板を外してボタン裏側の状態を確認したところ、中に入っているスプリングがスイッチを押す棒状部分の長さとほぼ同じ長さであり、スプリングが効いていないように思われた。
Dscn2037

14 そこで真ん中のボタンのスプリングを手持ちの少し長めのスプリングに交換したところ、ボタンを押した後にきちんと戻るようになった。下の1枚目の写真の右側が元のスプリング、左側が入れ替えたスプリングであり、交換後の状態は下の2枚目の写真のようにほかのボタンよりスプリングが少し飛び出る状態となった。
Dscn2036
Dscn2038
15 正常動作が確認できたので、すべての基板を取り付け、ボディもねじ止めして修理を完了した。
Dscn2040

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2023年2月24日 (金)

おもちゃの修理記録(2)アンパンマン スポーツ育脳マット

【不具合症状】
みどりのボタン(マット)が使えない
【依頼症状の確認】
テレビに接続して電源を入れると、ゲーム開始画面表示が出る。
しかし、みどりのマットボタンを一度使用すると2回目以降反応しない。
開始画面からみどり以外のボタンで先に進んだ場合であっても、その中のいずれかでみどりのマットボタンは一度反応するが、2回目以降は反応しなくなってしまう。
【原因究明と修理方法】
1 ゲームはみどり、あか、あお、ピンクの4つのマットボタンの左上に制御装置の箱が付いている。
Dscn2003
2 全体を裏返して電池ボックスがある側にして制御装置の箱を開ける。マットボタン寄り中央にねじが1本見えるだけであるが、これを外しただけでは箱は開かない。
Dscn2001
3 裏面にある白いクッション(足)4つをマイナスドライバーで丁寧に剥がすと、その下に計4本のねじが見える。
Dscn2000
4 この4本のねじを外してから再びひっくり返してスイッチの付いた表を上にすると上部カバーが外せ、中の基板とマットボタンの固定部分が見える。
Dscn1982
5 電源スイッチの赤いカバーを紛失防止のため外し、マットボタンが基板に接続している部分を固定しているプラスチックバーを留めているねじ3本と、マットをケースに止めているねじ2本を外すと制御部とマット部分が分離できる。下の写真はマットをケースに止めているねじを外す前の状態である。
Dscn1983
6 マットボタンの端子がどのように接続されているのかを調べた。マットの中に透明なビニールにプリントされた配線があり、それが制御部への接続点で4つのボタンと共通線の計5本の端子となっている。
Dscn1989
7 基板には上記端子に対応して、右からP1、P5、P4、P3、P2と表示されている。
Dscn1985
8 テスタでボタンの導通を調べたところ、一番右のP1が共通、P2がピンク、P3があお、P4があか、P5がみどりのボタンに対応していた。それぞれのボタンを押したときと離したときの抵抗値は次の通りであり、みどりの値が他に比べて少ない状態であった。

端子

ボタンの色

押したとき

離したとき

P2

ピンク

18kΩ

3MΩ

P3

あお

15kΩ

∞(オーバーレンジ)

P4

あか

9.8kΩ

132kΩ

P5

みどり

4.5kΩ

47.5kΩ

9 どの色のボタンがどの回路につながっているかを基板の回路を追ってみたところ、接続部分の上にあるチップ抵抗やチップコンデンサに次の表のように対応してつながっていた。なお、チップコンデンサは、ボタンから抵抗を通じた後にアースとの間に接続されていることから、チャタリング防止のバイパスコンデンサと思われる。
Dscn1985_2

端子

ボタンの色

抵抗

コンデンサ

P2

ピンク

R30

C28

P3

あお

R31

C29

P4

あか

R32

C30

P5

みどり

R33

C31

10 上記8の測定でみどりの抵抗値の差が少ないことから、R33をはんだ付けし直したり、C31を同容量(外したものを測ったところ0.1μFであった)の新しいものに交換したりしてみたが、みどりが1回だけしか反応しないという状況に変化はなかった。また、R33(「810」と表示されているが外したものを測ったところほぼ1kΩであった)を22kΩに交換したが、みどりが全く反応しなくなってしまったため、元のものに戻した。

11 インターネットで情報をさがしたところ、みどりのマットボタンが反応しないという症例について、次のような解決のヒントがあった。
「本件、マット内部の接続は不明のままですが、その後の検討で原因と対策方法がほぼ見えてきましたのでご連絡します。
原因は緑の内部パターン(p5)が共通線(p1)3vにマット内部の絶縁不良でプルアップの状態になっていることが判明。結果、緑のP1ポートがICのLow判定の閾値を上回る約1vとなりVlowが認識出来ない為と判断します。
対策としてはマットの縫製を解かず、基板上のP5傍のc31に並列に数Mohmを追加し0.5v以下にプルダウンすることでICにVlowを認識させる予定です。」(はしもとおもちゃ病院 ドクターNの診療室2021.2.18記事への西尾新冶さんの投稿)

12 そこで、各ボタンの動作時の電圧を上記9で判明した抵抗のマットボタン接続側部分で測ったところ次のとおりであり、みどりのマットボタンの出力が上記11に記載されている閾値の上下となっていないことが原因ではないかと考えた。

端子

ボタンの色

抵抗

押したとき

離したとき

P2

ピンク

R30

2.678V

0.063V

P3

あお

R31

2.764V

0.063V

P4

あか

R32

2.986V

0.933V

P5

みどり

R33

3.138V

2.030V

12_v
13 まず11の情報のとおりC31の上に1MΩのチップ抵抗を載せてはんだ付けして動作確認したが、みどりが1回だけしか反応しないという状況に変わりはなかった。
Dscn1990
電圧の変化を測ったところ、次のとおりであり、離したときに電圧が下がり切れていないと思われた。

端子

ボタンの色

抵抗

押したとき

離したとき

P5

みどり

R33

3.080V

1.974V

14 そこで1MΩに代えて22kΩの抵抗をC31の上にはんだ付けしたところ、みどりマットが正常に反応するようになった。

Dscn1992
電圧の変化を測ったところ、次のとおりであり、上記12のあかの値に近いものとなっていた。

端子

ボタンの色

抵抗

押したとき

離したとき

P5

みどり

R33

2.494V

0.891V


14_v
15 動作確認できたので、ケース等を元に戻して、修理を完了した。
【故障の原因】
・ 使用頻度の高いみどりのマットボタンの絶縁悪化。あかも今後発生の可能性あり。


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おもちゃの修理記録(1)消防車

最初に担当した修理です。消防車の側面に付いているホースが外れてしまったとのことでした。

【依頼症状の確認】
右側ホースが外れ、取り付け部分にホットボンドでの修理の跡がありました。
Dscn1890

【修理方法】
1 ホースの3か所(先端及び取付部分2か所)に0.7mmのステンレス針金で作った差し込み部分(ピン)を0.7mmドリルで穴開けの上接着剤で取り付けました。

Dscn1893

2 車体右側の上記1のピンを差し込む位置3か所に、0.7mmドリルで穴を開けました。
Dscn1894
3 接着剤をピンの周囲に塗ってから、ピンを車体の穴に合わせてはめ込んで取り付けました。
Dscn1926 
【依頼部分以外の修理】
1 ホース取り付けの際に車体を外したところ、左側1つ目の給水栓が外れかかっていましたので、接着剤で固定しました。
Dscn1902
2 左側後輪がタイヤハウスに当たっていたので車軸部分を確認したところ、右側にはある軸受けが左側では破損して無くなっていました。
Dscn1897
3 金属板(りん青銅板)を折り曲げて、左側用の軸受けを作成しました。
Dscn1899
4 作成した軸受けを接着剤で取り付けました。
Dscn1901
5 以上ですべての修理が終わりました。
Dscn1925

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おもちゃの修理記録(0)

以前から毎月の地元の公民館の広報誌におもちゃの病院が開かれているとの記載があり、興味を持っていました。
昨年12月の開院の日に話を聞きに行き、活動内容に共感し、メンバーのみなさんも素敵な方ばかりであったので、私も参加させていただくことにしました。
今年から実際に修理に携わることとなり、この2か月で3件の修理を担当しました。
ネット検索すると、おもちゃの病院の活動はあちこちいろいろな形でされていること、修理の情報を公開している方もいることを知りました。
そして、公開されている情報が私の今回担当した故障の修理への大きな助けとなったことから、私も自分の修理記録をブログで公開すればほかの方のお役に立つことがあるかもしれないと思い、修理記録を掲載することにしました。
修理記録は自分のためにワードでまとめているのですが、それがブログにどのように掲載できるか、試行錯誤しながら進めてみようと思います。

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