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2023年2月24日 (金)

おもちゃの修理記録(2)アンパンマン スポーツ育脳マット

【不具合症状】
みどりのボタン(マット)が使えない
【依頼症状の確認】
テレビに接続して電源を入れると、ゲーム開始画面表示が出る。
しかし、みどりのマットボタンを一度使用すると2回目以降反応しない。
開始画面からみどり以外のボタンで先に進んだ場合であっても、その中のいずれかでみどりのマットボタンは一度反応するが、2回目以降は反応しなくなってしまう。
【原因究明と修理方法】
1 ゲームはみどり、あか、あお、ピンクの4つのマットボタンの左上に制御装置の箱が付いている。
Dscn2003
2 全体を裏返して電池ボックスがある側にして制御装置の箱を開ける。マットボタン寄り中央にねじが1本見えるだけであるが、これを外しただけでは箱は開かない。
Dscn2001
3 裏面にある白いクッション(足)4つをマイナスドライバーで丁寧に剥がすと、その下に計4本のねじが見える。
Dscn2000
4 この4本のねじを外してから再びひっくり返してスイッチの付いた表を上にすると上部カバーが外せ、中の基板とマットボタンの固定部分が見える。
Dscn1982
5 電源スイッチの赤いカバーを紛失防止のため外し、マットボタンが基板に接続している部分を固定しているプラスチックバーを留めているねじ3本と、マットをケースに止めているねじ2本を外すと制御部とマット部分が分離できる。下の写真はマットをケースに止めているねじを外す前の状態である。
Dscn1983
6 マットボタンの端子がどのように接続されているのかを調べた。マットの中に透明なビニールにプリントされた配線があり、それが制御部への接続点で4つのボタンと共通線の計5本の端子となっている。
Dscn1989
7 基板には上記端子に対応して、右からP1、P5、P4、P3、P2と表示されている。
Dscn1985
8 テスタでボタンの導通を調べたところ、一番右のP1が共通、P2がピンク、P3があお、P4があか、P5がみどりのボタンに対応していた。それぞれのボタンを押したときと離したときの抵抗値は次の通りであり、みどりの値が他に比べて少ない状態であった。

端子

ボタンの色

押したとき

離したとき

P2

ピンク

18kΩ

3MΩ

P3

あお

15kΩ

∞(オーバーレンジ)

P4

あか

9.8kΩ

132kΩ

P5

みどり

4.5kΩ

47.5kΩ

9 どの色のボタンがどの回路につながっているかを基板の回路を追ってみたところ、接続部分の上にあるチップ抵抗やチップコンデンサに次の表のように対応してつながっていた。なお、チップコンデンサは、ボタンから抵抗を通じた後にアースとの間に接続されていることから、チャタリング防止のバイパスコンデンサと思われる。
Dscn1985_2

端子

ボタンの色

抵抗

コンデンサ

P2

ピンク

R30

C28

P3

あお

R31

C29

P4

あか

R32

C30

P5

みどり

R33

C31

10 上記8の測定でみどりの抵抗値の差が少ないことから、R33をはんだ付けし直したり、C31を同容量(外したものを測ったところ0.1μFであった)の新しいものに交換したりしてみたが、みどりが1回だけしか反応しないという状況に変化はなかった。また、R33(「810」と表示されているが外したものを測ったところほぼ1kΩであった)を22kΩに交換したが、みどりが全く反応しなくなってしまったため、元のものに戻した。

11 インターネットで情報をさがしたところ、みどりのマットボタンが反応しないという症例について、次のような解決のヒントがあった。
「本件、マット内部の接続は不明のままですが、その後の検討で原因と対策方法がほぼ見えてきましたのでご連絡します。
原因は緑の内部パターン(p5)が共通線(p1)3vにマット内部の絶縁不良でプルアップの状態になっていることが判明。結果、緑のP1ポートがICのLow判定の閾値を上回る約1vとなりVlowが認識出来ない為と判断します。
対策としてはマットの縫製を解かず、基板上のP5傍のc31に並列に数Mohmを追加し0.5v以下にプルダウンすることでICにVlowを認識させる予定です。」(はしもとおもちゃ病院 ドクターNの診療室2021.2.18記事への西尾新冶さんの投稿)

12 そこで、各ボタンの動作時の電圧を上記9で判明した抵抗のマットボタン接続側部分で測ったところ次のとおりであり、みどりのマットボタンの出力が上記11に記載されている閾値の上下となっていないことが原因ではないかと考えた。

端子

ボタンの色

抵抗

押したとき

離したとき

P2

ピンク

R30

2.678V

0.063V

P3

あお

R31

2.764V

0.063V

P4

あか

R32

2.986V

0.933V

P5

みどり

R33

3.138V

2.030V

12_v
13 まず11の情報のとおりC31の上に1MΩのチップ抵抗を載せてはんだ付けして動作確認したが、みどりが1回だけしか反応しないという状況に変わりはなかった。
Dscn1990
電圧の変化を測ったところ、次のとおりであり、離したときに電圧が下がり切れていないと思われた。

端子

ボタンの色

抵抗

押したとき

離したとき

P5

みどり

R33

3.080V

1.974V

14 そこで1MΩに代えて22kΩの抵抗をC31の上にはんだ付けしたところ、みどりマットが正常に反応するようになった。

Dscn1992
電圧の変化を測ったところ、次のとおりであり、上記12のあかの値に近いものとなっていた。

端子

ボタンの色

抵抗

押したとき

離したとき

P5

みどり

R33

2.494V

0.891V


14_v
15 動作確認できたので、ケース等を元に戻して、修理を完了した。
【故障の原因】
・ 使用頻度の高いみどりのマットボタンの絶縁悪化。あかも今後発生の可能性あり。


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