おもちゃの修理記録(18)The Big Piano
【依頼症状の確認】
他のドクターが担当していたが、鍵盤スイッチの補修をした上でスピーカーを手持ちの小型のものをつないで試したが、不具合が解消されないため、別の目で確認してみようということで引き継いだ。
なお、前の担当ドクターがネットで調べたところ、起動時に起動音がするはずであるが、その音も出なかったとのことであった。
【原因究明と修理方法】
1 作業準備のため、鍵盤上部のコントロールボックスの裏にあるねじ6本を外して、基板が見えるようにした。
2 鍵盤スイッチへの配線が9本×4=36本あり、このままでは基板の状態が確認できないため、36本の配線を一旦取り外すことにした。前の担当ドクターが4つの組ごとに配線をまとめてくれていたので、その組ごとに各色がどこに接続しているのかメモした上で、配線のはんだ付けを外していった。
3 作業前にスピーカー端子にヘッドフォンを接続し、電池を接続してスイッチオンの時の電流を測ったところ0.82mAであり、しばらくオンのままにしておいても変化はなかった。ヘッドフォンからは音は出なかった。なお、電池ボックスの-は基板のGNDに、電池4本のうち3本目の+側(4本のボックスの途中の3本目)が基板の「+4.5V」表示端子に、最後の4本目の+側がスピーカーの一方に接続され、スピーカーのもう一方は基板の「SP-」に接続されていたので、その通りに電池とヘッドフォンを接続した。
4 基板を拡大鏡で確認したところ、モールドされたICの横にあるチップ抵抗のうちの1つがずれていて、基板のパターンにきちんとはんだ付けされていないことに気が付いた。
5 このチップ抵抗はんだ付けし直して、あるべき位置に直した。
6 チップ抵抗を直してから、上記3と同じ接続をして電源スイッチを入れたところ、ヘッドフォンから起動音が聞こえた。なお、電流はスイッチオン直後に10mA程度流れ、起動音が止まると3と同程度のほとんどゼロとなった。
7 電池ボックス内を確認したところ液漏れの汚れが残っていたので、電池端子を取り外してケース内をウェットティシュできれいにすると共に、金属端子を細かいやすり(水ペーパー)などで磨いた。
↑ 外してある端子は磨いたもの。その他は取り外し前。
↓ 以下は磨いたり掃除した後の状態。
8 スピーカーのコーン紙は無くなってしまっており、端子間の導通もなかったことから、手持ちのスピーカーと交換した。元のスピーカーは32Ωであったが、手持ちは8Ωしかなかったのでこれを取り付け、鍵盤スイッチの配線以外の配線をしてケースに基板を納めて電池を入れ、スイッチをオンにしたところ、起動音が出た。
9 上記2で取り外した鍵盤スイッチへの配線を順にはんだ付けした。
10 鍵盤スイッチへの配線を完了し、ケースを取り付けて電池を入れて、鍵盤スイッチが正しく動作することを確認できたが、スピーカーが本来の32Ωではなく8Ωと1/4となっていることと、上記3に記載したように最後の電池の1.5Vが直接スピーカーに掛かっている状態であることから、スピーカーに掛かる電力はW=1.5V*1.5V/8Ω=0.28W程度となることが予想され、8Ωスピーカーの対応電力0.25Wでは過大となっているように思われた。そこで、電池+側とスピーカーの間に10Ωの抵抗を追加することとした。これにより電力はW=1.5V*1.5V/(10+8)Ω=0.125Wとなり、スピーカーの保護になると考えられた。また、追加した抵抗は1/4W=0.25Wなので、この電力に耐えられると思われる。抵抗はスピーカーの端子に直付けし、絶縁のため熱収縮チューブを被せた。
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