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2023年6月29日 (木)

ハンディ受信機DJ-X2000による9600bpsパケット受信

先日、広い周波数範囲(説明書によると0.1~2149.999950MHz)が受信できるハンディ受信機であるアルインコ社のDJ-X2000の中古を入手しました。これを使えば、以前製作した5GHzトランスバータで1.2GHzトランシーバの受信周波数範囲外になってしまう衛星(Ten-Kho2)
のダウンリンク周波数が受信できるかもしれないと考えての入手です。
Ten-Koh2はまだ先なので、DJ-X2000の説明書を見ていろいろ試していたところ、9600bpsのパケットGMSKやG3RUHがこれで受信してデコードできないかとも思い、APRSの144.64MHzで運用されている9600bpsの電波を受信して、試してみました。
DJ-X2000はFMステレオ放送に対応するため、FMモードにナローとワイドがあります。GMSKなどの9600bpsはナローモードしかない一般的なFMトランシーバではデコードできませんが、FMワイドモードならデコード可能かと考えました。
DJ-X2000を144MHz帯の八木アンテナに接続して十分な電波強度を確保した上で、FMワイドモード受信にし、DJ-X2000の音声出力を9600bpsモードでdirewolfを起動したパソコンの音声入力端子へ接続したところ、デコードに成功しました。
その様子は次の写真のとおりです。この方法を応用して他に何ができるか、今後考えてみたいと思っています。
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2023年6月19日 (月)

おもちゃの修理記録(19)プリモプエル

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【不具合症状】
1 電池の蓋が開かない。
2 日時の設定ができない。

【依頼症状の確認】
1 電池の蓋は大きさの合うドライバーで回して開けることができたが、ドライバーがかかりにくい形状であるため、交換する必要があると判断した。
2 両手のボタンの反応がない状態であり、配線の切断等が考えられた。

【原因究明と修理方法】
1 電池ケースの蓋を開けて中を確認したが、液漏れ等はなくきれいだった。
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2 電池の蓋を留めるねじは外れ止めプラスチック部品が取り付けられていたので、マイナスドライバーで持ち上げながらねじを回して少し隙間を開けてから、木材片でねじを押しながらねじを回して、外れ止めを取り外した。
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3 取り外したねじの頭を確認したところ、ドライバーを掛ける部分が少しえぐれていて引っ掛かりにくい状態であった。ねじのサイズは2.6mmφ長さは7mm程度であったので、手持ちの2.6mmφ長さ8mmのねじと交換することとした。
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4 新しいねじを電池蓋の穴に通してから、プラスチックの外れ止めを取り付けて、ねじの交換は完了した。
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5 電池ボックスと一体となった制御部を人形から取り出した。上部が人形とひもで結ばれていたので、それを緩めて取り出したところ、本体のスイッチなどとコネクタで接続されていた。コネクタには同じ色が2本ずつ隣り合わせで計12本がつながっていた。
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6 念のため制御部の中を確認したが、コンデンサのパンクなどの異状はなかった。ケースは下の写真の丸印のある4つのねじで留められていたが、青丸のねじは穴の奥の方にあるので、長い柄のドライバーが必要であった。
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7 12本のコネクタの線が本体のどのスイッチやセンサーに接続されているかを、端子にテスターを当てながら確認した。製品の説明書から左右の手と尻尾はスイッチ、頭と頬は光センサー(Cds?)、耳はマイクであると推定できたので、導通や抵抗値の変化を測定し、接続されている各色の線を軽く引っ張って手などの引っ張られ具合を見て、接続を次の表のように推定した。
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写真の右側(緑)の線から

順号

接続先

1,2

3,4

右耳

5,6

7,8

9,10

左手

11,12

右手

8 上記7のうち、右手と左手のスイッチの接触がなかったため、スイッチを取り出して確認することとした。最初に右手のスイッチを取り出そうとして、上記5で取り出した制御部の奥につながっている配線を辿り、中の袋状部分の縫い目を切り開いて腕などの中の綿を取り出し、赤い配線を引っ張りながらスイッチを取り出そうとしたが、出てこなかった。中から引っ張り出すことはあきらめて、右手の中央の指の縫い目を切り開いたところ、スイッチ基台が次の写真の橙色の丸印のとおり手に縫い付けられており、引っ張っても取り出せない状態であることが判明した。なお、赤い配線が途中で切れていたが、テスターで測定したところスイッチの接触も良くなかった。
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9 使用されているタクトスイッチを交換したが、同じ高さの物がなかったため、当初少し低いものを使用した。タクトスイッチを押した際にコネクタ部の赤い配線の導通が確認できたので、これをスイッチ基台に付け直して人形の手のひらを押したが、コネクタ部での導通は確認できなかった。その原因はスイッチの高さが低いため、基台を押す範囲内ではスイッチが接触しないためであると考えられた。
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10 そこで、オリジナル品より高さのあるタクトスイッチを使用し、その押される部分を削って同じ高さにしてから交換することとした。カッターナイフで大まかな長さに切り、ノギスで測りながらやすりで削っておおよそ同じ高さにし、更に基台に取り付けてコネクタ部での導通を確認し、外しては削りなおすことを繰り返しながら、高さを調整した。(ノギスでの計測では、スイッチ出っ張り部分の長さは1.6mmであった。)
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11 右手のスイッチの交換後、左手のスイッチも同様にして交換した。左右どちらの手も、人形の指先を開いて、中の綿をかなりの量取り出してからスイッチが現れた。なお、左手の配線は、次の写真の通り橙色である。
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12 スイッチを交換した手の部分の基板は次の写真のとおり。左の黒いスイッチがオリジナル、右の白いスイッチが交換後のものである。交換時には配線を引っ張り出して作業しやすくし、交換後は中から配線を引っ張って元に戻した。
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13 左右の手のスイッチを交換したので、開いた手を縫い付け直した。縫い付けに伴って抜き出した綿を戻すのであるが、詰めすぎるとタクトスイッチが押しっぱなしとなってしまうため、コネクタ部にテスターを接続したまま動作を確認しながら綿の量を調整して、縫い付けた。
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14 テスターでの動作確認をして、手の縫い直しを完了した。
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15 上記8で切り開いた胴体内部の袋状の部分も、縫い直した。
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16 上記5で取り出した制御部のコネクタを接続し電池を入れて手のスイッチなどの動作を確認し、制御部を本体内部のひもに留めて中に入れ直して修理を完了した。完了後に電池を入れて日時の設定等を行い、正常動作を確認した。
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2023年6月11日 (日)

JAMSATシンポジウム2023関連イベント「衛星からの電波受信体験プログラム」

昨日2023年6月10日土曜日に、JAMSATシンポジウムが3年ぶりに日本科学未来館で集まって開催されました。
その時の関連イベントで、午前中に高知高等専門学校の「次世代高専衛星プロジェクト」で開発された段ボールアンテナの製作会が一般向けに行われ、完成したアンテナを使用して衛星からの電波を実際に受信する体験プログラムが実施されました。
その際受信したアマチュア衛星SO-50はFMレピータが稼働し、アマチュア局のQSOや、この受信体験プログラムを知っていたアマチュア局から会場での受信者へ呼びかける声などを聴くことができました。
衛星からの電波を受信するにはアンテナを衛星の方向に向ける必要がありますが、今回のイベントでスマートホンにインストールしておいた「AmsatDroid」というアプリを起動して、リアルタイムで衛星の方向と仰角を指で指し示すことで、イベント参加者の受信成功に導くことができたと感じました。そこで、このアプリをどのように使ったかを、簡単に紹介します。
なお、衛星の移動に伴う周波数補正については、事前のアンテナ製作会の中でSO-50のダウンリンク周波数である436.800MHzの+15kHzから手動で下げていくことを担当者が説明していましたが、実際の受信時には2、3分ごとに5kHzずつ下げた周波数をアナウンスすることで、周波数補正をしてもらいました。

1 パスの前にGPSによりAmsatDroidで現在地を取得してから、SO-50のパスを表示させた。日本科学未来館のグリッドロケータはPM95voであった。
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2 パスの間は衛星の位置表示画面に切り替え、画面上に赤い点で表示される衛星の位置を確認し、1、2分ごとにアンテナの方向を指し示した。周波数補正は2、3分ごとにアナウンスした。
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※ 上記画面はイベントの翌日撮影したものであるので、衛星の位置を示す赤丸がなく、図の右上の位置表示も受信時とは異なる。


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2023年6月 3日 (土)

ボール紙とアルミテープによる5GHz帯ホーンアンテナの製作実験

〇 製作した5GHzトランスバータ用にはパラボラアンテナを入手済みであるが、手軽に移動運用するために小型のアンテナを製作したいと考えた。
〇 SHFではホーンアンテナが作りやすく基本のアンテナと思われたので、これを作成したいと考えた。
〇 ホーンも同軸導波管変換器(トランスデューサ)も真鍮板などの金属板で作成することが一般的であるが、金属板を加工してうまくいかなかった場合にがっかり度が非常に大きいので今まで踏み切れなかったが、ボール紙で形を作ってそれに金属テープを貼り付けて試してみたらどうかと思い付いた。
〇 以前ホームセンターで購入したアルミテープとボール紙があったので、以下のとおり製作して測定など実験してみた。

1 同軸導波管変換器の製作

(1) 5GHz帯の導波管はWRJ-6(内径40mm×20mm)又はWRJ-7(内径35mm×16mm)を使用するが、次の「2 ホーンの製作」で使用した設計図(”The W1GHZ Online Microwave Antenna Book” Chapter 2 ‘Electromagnetic Horn Antennas’ Figure 2-4 の5760MHz14dBiホーンアンテナ展開図)がWRJ-7サイズとなっていたので、WRJ-7サイズの同軸導波管変換器を製作することにした。

(2) 内径は35mm×16mmと決まったが、同軸を接続するプロープの長さや位置が不明であった。探し出したメーカーのCAD図面はWRJ-6サイズであり、WRJ-7サイズのものは見つけられなかった。

(3) 「電子情報通信学会 知識ベース「知識の森」9群7編4章「4-1導波管変換器」に導波管変換器の動作などの説明があり、その中に「プローブは,挿入長λ/4(λ:自由空間波長)かつ導波管の短絡板との間隔をλg/4(λg:導波管内波長)として挿入され,両者の整合がとられる」との説明を見つけた。

(4) 導波管内波長λgについては、WRJ-6における波長表がJARLの技術資料に掲載されていたほか、1アマ無線工学試験の解説等にλg=λ/√(1-(λ/λc)^2)(λ:自由空間波長、λc:TE10モードの際の導波管の遮断波長=2×(導波管の長い辺の長さ))であるとの説明を見つけた。

(5) 5GHz帯の呼び出し周波数5760MHzで計算すると、λ=(3×10^8)÷ (5760×10^6)=0.052m=52mm、λc=2×0.035=0.07m=70mm、λg=0.052/√(1-(0.052/0.07)^2)=0.052/√(1-0.551837)=0.052/0.66045=0.077676m=77mmとなる。

(6) 上記(5)から、同軸導波管変換器のプロープの長さは52/4=13mm、プロープを取り付ける位置は77/4=19.25mmなので長さ38.5mmWRJ-7導波管の中央にプロープを取付けて導波管の一方を金属遮蔽すればよいと考えた。

(7) 製作する変換器は35mm×16mm×38.5mmの大きさで、35mm×16mmの一方がふさがり他方が解放されているものとなるので、その展開図をボール紙に描いて切断した次の写真のようなものを作成した。プロープの位置にはプロープとコネクタの取り付けねじが通る穴の位置に目印となる小さめの穴を開けておいた。
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(8) 上記(7)のボール紙の内側となる面にアルミテープを貼り付けた。
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(9) 取付面から13mmの高さになるようにプロープをはんだ付けしたSMAコネクタをプロープがアルミテープの側に出るようにこの箱にねじ止めし、アルミテープ側を内側にして箱型に折って組み立てた。
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(10) 一旦箱を輪ゴム等で仮止めしてLiteVNAで計測してみたところ、SWRの極小点が5.8GHz付近になっていることが確認できた。
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(11) そこで接合部を接着剤やテープで留めて同軸導波管変換器を組み立てた。
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(12) 組みあがった状態でLiteVNAで再度計測したところ、SWRの極小点が5.6GHz付近に下がっていた。
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(13) プロープを少し切断したところ5.8GHz付近まで上昇したので、調整をここまでとした。
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2 ホーンの製作

(1) 上記1(1)に記載したホーンアンテナの設計図を印刷し、それをボール紙に写し取った。
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(2) 線に沿って切り抜いた。
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(3) 切り抜いたボール紙にアルミテープを貼り付けた。幅が足りない部分は、段差があるより隙間がある方がまだよいかと考え、重ならないように継ぎ足しして貼り付けた。
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(4) アルミ面が内側となるよう折り曲げて組み立て、接合部を接着剤とテープで留めて組み上げた。
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(5) 同軸導波管変換器とホーンも接合部(裏面)を接着剤とテープで留めた。
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(6) 出来上がったホーンアンテナをLiteVNAで計測したところ、5.8GHz付近でSWRが極小となった。
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Horn20230602_02

※ LiteVNAによる計測は周囲や接続の状態により変化した。今回はボール紙でアンテナが作れるかという実験で、このアンテナが実用的かどうかは今後使用した時に改めて検討する。

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