【不具合症状】
1 電池の蓋が開かない。
2 日時の設定ができない。
【依頼症状の確認】
1 電池の蓋は大きさの合うドライバーで回して開けることができたが、ドライバーがかかりにくい形状であるため、交換する必要があると判断した。
2 両手のボタンの反応がない状態であり、配線の切断等が考えられた。
【原因究明と修理方法】
1 電池ケースの蓋を開けて中を確認したが、液漏れ等はなくきれいだった。
2 電池の蓋を留めるねじは外れ止めプラスチック部品が取り付けられていたので、マイナスドライバーで持ち上げながらねじを回して少し隙間を開けてから、木材片でねじを押しながらねじを回して、外れ止めを取り外した。
3 取り外したねじの頭を確認したところ、ドライバーを掛ける部分が少しえぐれていて引っ掛かりにくい状態であった。ねじのサイズは2.6mmφ長さは7mm程度であったので、手持ちの2.6mmφ長さ8mmのねじと交換することとした。
4 新しいねじを電池蓋の穴に通してから、プラスチックの外れ止めを取り付けて、ねじの交換は完了した。
5 電池ボックスと一体となった制御部を人形から取り出した。上部が人形とひもで結ばれていたので、それを緩めて取り出したところ、本体のスイッチなどとコネクタで接続されていた。コネクタには同じ色が2本ずつ隣り合わせで計12本がつながっていた。
6 念のため制御部の中を確認したが、コンデンサのパンクなどの異状はなかった。ケースは下の写真の丸印のある4つのねじで留められていたが、青丸のねじは穴の奥の方にあるので、長い柄のドライバーが必要であった。
7 12本のコネクタの線が本体のどのスイッチやセンサーに接続されているかを、端子にテスターを当てながら確認した。製品の説明書から左右の手と尻尾はスイッチ、頭と頬は光センサー(Cds?)、耳はマイクであると推定できたので、導通や抵抗値の変化を測定し、接続されている各色の線を軽く引っ張って手などの引っ張られ具合を見て、接続を次の表のように推定した。
写真の右側(緑)の線から
順号
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色
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接続先
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1,2
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緑
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頬
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3,4
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黒
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右耳
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5,6
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紫
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頭
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7,8
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黄
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尾
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9,10
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橙
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左手
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11,12
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赤
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右手
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8 上記7のうち、右手と左手のスイッチの接触がなかったため、スイッチを取り出して確認することとした。最初に右手のスイッチを取り出そうとして、上記5で取り出した制御部の奥につながっている配線を辿り、中の袋状部分の縫い目を切り開いて腕などの中の綿を取り出し、赤い配線を引っ張りながらスイッチを取り出そうとしたが、出てこなかった。中から引っ張り出すことはあきらめて、右手の中央の指の縫い目を切り開いたところ、スイッチ基台が次の写真の橙色の丸印のとおり手に縫い付けられており、引っ張っても取り出せない状態であることが判明した。なお、赤い配線が途中で切れていたが、テスターで測定したところスイッチの接触も良くなかった。
9 使用されているタクトスイッチを交換したが、同じ高さの物がなかったため、当初少し低いものを使用した。タクトスイッチを押した際にコネクタ部の赤い配線の導通が確認できたので、これをスイッチ基台に付け直して人形の手のひらを押したが、コネクタ部での導通は確認できなかった。その原因はスイッチの高さが低いため、基台を押す範囲内ではスイッチが接触しないためであると考えられた。
10 そこで、オリジナル品より高さのあるタクトスイッチを使用し、その押される部分を削って同じ高さにしてから交換することとした。カッターナイフで大まかな長さに切り、ノギスで測りながらやすりで削っておおよそ同じ高さにし、更に基台に取り付けてコネクタ部での導通を確認し、外しては削りなおすことを繰り返しながら、高さを調整した。(ノギスでの計測では、スイッチ出っ張り部分の長さは1.6mmであった。)
11 右手のスイッチの交換後、左手のスイッチも同様にして交換した。左右どちらの手も、人形の指先を開いて、中の綿をかなりの量取り出してからスイッチが現れた。なお、左手の配線は、次の写真の通り橙色である。
12 スイッチを交換した手の部分の基板は次の写真のとおり。左の黒いスイッチがオリジナル、右の白いスイッチが交換後のものである。交換時には配線を引っ張り出して作業しやすくし、交換後は中から配線を引っ張って元に戻した。
13 左右の手のスイッチを交換したので、開いた手を縫い付け直した。縫い付けに伴って抜き出した綿を戻すのであるが、詰めすぎるとタクトスイッチが押しっぱなしとなってしまうため、コネクタ部にテスターを接続したまま動作を確認しながら綿の量を調整して、縫い付けた。
14 テスターでの動作確認をして、手の縫い直しを完了した。
15 上記8で切り開いた胴体内部の袋状の部分も、縫い直した。
16 上記5で取り出した制御部のコネクタを接続し電池を入れて手のスイッチなどの動作を確認し、制御部を本体内部のひもに留めて中に入れ直して修理を完了した。完了後に電池を入れて日時の設定等を行い、正常動作を確認した。
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