ボール紙とアルミテープによる5GHz帯ホーンアンテナの製作実験(続)
6月3日の記事に掲載した5GHz帯ホーンアンテナについて、その後エレメントの長さや短絡板の位置などをいろいろ変えてLiteVNAで計測したりして試行錯誤したところ、そこそこの利得があるのではないかという結果が得られたので紹介する。実用性については、今後実際に使用してから改めて報告したいと考えている。
1 寸法
今までの製作実験の結果から、変換器のエレメントは2φmmのすずメッキ線で作成し、エレメントの導波管内での高さは11.2mm(導波管の材料であるボール紙の厚さ0.6mmを考慮するとSMAコネクタからの高さは11.8mm)、導波管はWJR6規格(内寸40mm×20mm)、エレメントから短絡版までの距離は12mmとする。ホーンの大きさは後述。
2 材料
材料は厚さ0.6mmのボール紙、表面処理していない(テスタで導通があることを確認)厚さ0.05mm光沢アルミテープ、厚さ11μmのアルミ箔、M1.4×3mmねじ及びナット、接着剤(今回は「コニシ株式会社ウルトラ多用途接着剤SU」を使用した)、2φmmすずメッキ線6.5mm長、0.5φmm×5mm長程度の導線(部品の脚の残り)、SMAコネクタ、M2×6mmねじ及びナットである。
材料 |
大きさ |
使用箇所 |
備考 |
ボール紙 |
0.6mm厚 |
変換器及びホーン |
― |
アルミテープ |
0.05mm厚 |
変換器 |
表面処理なし(光沢) |
アルミ箔 |
11μm厚 |
ホーン |
ホーン全体を覆えるアルミテープがあればその方がよい |
ねじ・ナット |
M1.4×3mm 12組 |
変換器及びホーン |
― |
ねじ・ナット |
M2×6mm 4組 |
コネクタ取付 |
コネクタの穴の数が4つの場合 |
SMAコネクタ |
1つ |
エレメント |
― |
すずメッキ線 |
2φmm 6.5mm長 |
エレメント |
― |
導線 |
0.5φmm 5mm長 |
エレメントとコネクタの接続 |
― |
接着剤 |
― |
ホーンへのアルミ箔貼り付け |
― |
3 製作方法
(1) エレメント
① SMAコネクタ上のエレメントの長さを11.8mmにするため、コネクタの基台の接続部分の長さ5.3mmを引いた6.5mmの長さにすずメッキ線を切る。上下面を平らにするため、カッターで少し長めに切断してから、ノギスで測りながらやすりで削った。エレメント長はコネクタに合わせて調整する必要がある。
② ①で作成したエレメントをSMAコネクタに取り付けるため、エレメントの一端に0.6mmドリルで穴を開け、0.5φmm程度の導線を取り付けた。
③ ②で作成したエレメントをSMAコネクタにはんだ付けして取り付けた。コネクタ上の高さが11.8mmであることをノギスで測定した。
(2) 変換器
① 設計図に従い、変換器と短絡板をボール紙で切り出した。
② 折り目にカッターで軽く線を入れてから、折り曲げた。
③ 折り曲げた形を保ちながら、内側にアルミテープを貼り付けた。ボール紙が平らなままアルミテープを貼り付けてしまうと、折り曲げた時に導波管内部にしわが生じてしまうため、なるべく折れ曲がった形でアルミテープを貼り付けていくことが、製作のコツである。また、変換器の折りしろやホーンと接続する部分は、アルミテープ同士又はアルミ箔が接触するようにアルミテープを貼り付ける必要がある。各取付穴は組み上げ後に位置がわかるように、あらかじめキリで穴を開けておいた。
④ 短絡板についても、変換器本体と同様に折り曲げながらアルミテープを貼り付けた。
⑤ 変換器本体に短絡板を取り付けながら、組み上げた。なお、組み上げ前にアルミテープに取付穴を1φmmのドリルで開けておいた。SMAコネクタは位置合わせをして2φmmの穴を開けてねじを通しておいた。
⑥ (1)で作成したエレメントを取り付けて、変換器は完成した。なお、最初作成した短絡板は少し隙間ができてしまったので、サイズを調整して作り直した。(①に掲載した設計図は、修正後の大きさとなっている。)
⑦ 出来上がった変換器をLiteVNAで測定したところ、5760MHzでVSWRが1.359となり、まずまずの値と思われた。5GHzのバンド内のVSWRなどはほぼ一定であったので、変換器はこれで完成とした。
(3) ホーン
① ホーンの設計は、インターネットを検索して見つけ出した「The W1GHZ Online Microwave Antenna Book」(http://www.w1ghz.org/antbook/contents.htm)に掲載されている「HDL ANT for Windows」を利用し、「周波数:5760MHz、H面:40mm、E面:20mm、利得:14dB」と設定して、ホーンの設計図を作成した。
② ①で作成された設計図はポストスクリプト型式でありWindowsでは直接利用できないため、Linux(Ubuntu)でPDFに変換してから、プリンターで印刷した。
ダウンロード - horn_wrj6.pdf
③ ②で印刷した図面に組み立てしろや変換器との取付しろを付け加えて、設計図とした
④ ③の設計図の角や穴の位置などをボール紙にキリで写して、トレースした。
⑤ トレースしたボール紙を切り抜き、アルミ箔を接着剤で貼り付けた。変換器同様ある程度折り曲げて形を整えてからアルミ箔を貼った方が、しわが少なくきれいに貼ることができる。
⑥ アルミ箔は、変換器との接触部分を考慮しながらボール紙に合わせて切り抜いて、ヘリの部分は折り曲げて接着した。
⑦ ホーンの形を整えながら、折り曲げて立体に組み上げた。なお、折り曲げる前に、各取付穴を1φmmのドリルで開けておいた。
⑧ ホーンと変換器をねじで取り付けて完成した。
⑨ 完成したホーンアンテナをLiteVNAで測定したところ、5760MHzでVSWRが1.332、5GHzのバンド内でもほぼ一定となり、実用範囲と思われた。
4 他のアンテナとの比較
・ LiteVNAでVSWRを計測しただけではアンテナの性能がどの程度か検討が付かないので、室内実験ではあるが、LiteVNAのマーカー出力を受信してGigaStで比較してみることにした。
・ 5GHz帯のWiFiに付属していたアンテナと作成したホーンアンテナとの受信強度を比較した。
・ LiteVNAのマーカー出力が小さめなため1m程度の距離での測定となったが、ホーンアンテナの方が10dB以上の利得があることが確認できた。
(1) WiFiアンテナ
(2) ホーンアンテナ
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