〇 製作した5GHzトランスバータ用にはパラボラアンテナを入手済みであるが、手軽に移動運用するために小型のアンテナを製作したいと考えた。
〇 SHFではホーンアンテナが作りやすく基本のアンテナと思われたので、これを作成したいと考えた。
〇 ホーンも同軸導波管変換器(トランスデューサ)も真鍮板などの金属板で作成することが一般的であるが、金属板を加工してうまくいかなかった場合にがっかり度が非常に大きいので今まで踏み切れなかったが、ボール紙で形を作ってそれに金属テープを貼り付けて試してみたらどうかと思い付いた。
〇 以前ホームセンターで購入したアルミテープとボール紙があったので、以下のとおり製作して測定など実験してみた。
1 同軸導波管変換器の製作
(1) 5GHz帯の導波管はWRJ-6(内径40mm×20mm)又はWRJ-7(内径35mm×16mm)を使用するが、次の「2 ホーンの製作」で使用した設計図(”The W1GHZ Online Microwave Antenna Book” Chapter 2 ‘Electromagnetic Horn Antennas’ Figure 2-4 の5760MHz14dBiホーンアンテナ展開図)がWRJ-7サイズとなっていたので、WRJ-7サイズの同軸導波管変換器を製作することにした。
(2) 内径は35mm×16mmと決まったが、同軸を接続するプロープの長さや位置が不明であった。探し出したメーカーのCAD図面はWRJ-6サイズであり、WRJ-7サイズのものは見つけられなかった。
(3) 「電子情報通信学会 知識ベース「知識の森」9群7編4章「4-1導波管変換器」に導波管変換器の動作などの説明があり、その中に「プローブは,挿入長λ/4(λ:自由空間波長)かつ導波管の短絡板との間隔をλg/4(λg:導波管内波長)として挿入され,両者の整合がとられる」との説明を見つけた。
(4) 導波管内波長λgについては、WRJ-6における波長表がJARLの技術資料に掲載されていたほか、1アマ無線工学試験の解説等にλg=λ/√(1-(λ/λc)^2)(λ:自由空間波長、λc:TE10モードの際の導波管の遮断波長=2×(導波管の長い辺の長さ))であるとの説明を見つけた。
(5) 5GHz帯の呼び出し周波数5760MHzで計算すると、λ=(3×10^8)÷ (5760×10^6)=0.052m=52mm、λc=2×0.035=0.07m=70mm、λg=0.052/√(1-(0.052/0.07)^2)=0.052/√(1-0.551837)=0.052/0.66045=0.077676m=77mmとなる。
(6) 上記(5)から、同軸導波管変換器のプロープの長さは52/4=13mm、プロープを取り付ける位置は77/4=19.25mmなので長さ38.5mmWRJ-7導波管の中央にプロープを取付けて導波管の一方を金属遮蔽すればよいと考えた。
(7) 製作する変換器は35mm×16mm×38.5mmの大きさで、35mm×16mmの一方がふさがり他方が解放されているものとなるので、その展開図をボール紙に描いて切断した次の写真のようなものを作成した。プロープの位置にはプロープとコネクタの取り付けねじが通る穴の位置に目印となる小さめの穴を開けておいた。

(8) 上記(7)のボール紙の内側となる面にアルミテープを貼り付けた。

(9) 取付面から13mmの高さになるようにプロープをはんだ付けしたSMAコネクタをプロープがアルミテープの側に出るようにこの箱にねじ止めし、アルミテープ側を内側にして箱型に折って組み立てた。

(10) 一旦箱を輪ゴム等で仮止めしてLiteVNAで計測してみたところ、SWRの極小点が5.8GHz付近になっていることが確認できた。

(11) そこで接合部を接着剤やテープで留めて同軸導波管変換器を組み立てた。

(12) 組みあがった状態でLiteVNAで再度計測したところ、SWRの極小点が5.6GHz付近に下がっていた。

(13) プロープを少し切断したところ5.8GHz付近まで上昇したので、調整をここまでとした。

2 ホーンの製作
(1) 上記1(1)に記載したホーンアンテナの設計図を印刷し、それをボール紙に写し取った。

(2) 線に沿って切り抜いた。

(3) 切り抜いたボール紙にアルミテープを貼り付けた。幅が足りない部分は、段差があるより隙間がある方がまだよいかと考え、重ならないように継ぎ足しして貼り付けた。

(4) アルミ面が内側となるよう折り曲げて組み立て、接合部を接着剤とテープで留めて組み上げた。

(5) 同軸導波管変換器とホーンも接合部(裏面)を接着剤とテープで留めた。

(6) 出来上がったホーンアンテナをLiteVNAで計測したところ、5.8GHz付近でSWRが極小となった。


※ LiteVNAによる計測は周囲や接続の状態により変化した。今回はボール紙でアンテナが作れるかという実験で、このアンテナが実用的かどうかは今後使用した時に改めて検討する。
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